明日(11/24)は文学フリマ東京で『UFO手帖4.0』が初出しとなるのですが、その前に表紙のシチュエーションとポエムが謎すぎて、多少の解説が必要だろうと思い立ち、この同人誌に掲載した表紙解説をブログにあげることにしました。
――で、気になった方は、明日の文学フリマ東京「ノ-36」にお起こしくださいませませ。
■表紙の絵について――『夜の美しさ』
<抜粋>夫が夜になると山の上に出かけてUFOの乗員である種々の若い女性と秘密の会議を聞き、金髪の自称金星人を何度も訪問し、夫人の申立によれば彼女を四度まで殺害しようと企てたのも、この期間のことだったという。
このイラストのイメージの元となったのは、上記に縦組み(このブログでは太字の横組み)で示した<抜粋>である。それは不思議な写真を撮影するステラ・ランシング夫人のことを書いた特集記事にある「時計円盤の幽霊」で使用した資料、『UFOと宇宙』(1975年12月号 No.15)の「ステラ・ランシング夫人の不思議な写真」の注釈にあった。
もう少し詳しく説明すると、この注釈はステラ・ランシング夫人の写真を宗教的象徴と解釈した著者(医学博士バートルド・シュワルツ)が類似性を感じさせる事例として示したものだ。
その注釈では、ニュージャージー州の「X」というコンタクティの妻が、息子が脳腫疹で瀕死の状態にあった数ヶ月のあいだ、消えた白黒テレビに色鮮やかなキリスト像が浮かび上がるのを見たという出来事が紹介されるものだが、それに付随した出来事として、このカラーのキリスト像を上書きするほど物騒な<抜粋>が語られる――若い女性金星人と夜な夜な山の中で密会し妻の殺害を企てているコンタクティの夫――というシチュエーション。そこに沸き立つ狂気と強い幻想に私は身震いした。
この翻訳された記事の短い注釈だけではよくわからないが、この注釈には丁寧に出典が明示されており、その詳細が『FSR』(フライング・ソーサー・レビュー)1972年7-8月号の「夜の美しさ」という記事にあるとわかった。さっそく調べてみると確かにその記事が存在しており、さらに運良く同じ『UFOと宇宙』の別の号に翻訳されて掲載されている事がわかった。
当然じっくりと読んでみたが、そんな夫が金髪宇宙人と共謀して夫人を殺そうとしていたなんて話はどこにもない。翻訳のせいかと思い、原本の『FSR』も入手してしらみ潰しに探してみたのだが、やっぱりない。ない。ない。どこにもない。
私が見落としているだけかもしれない。もしかしたら著者が出典を間違えたのかもしれない。そういうこともあるだろう。よくあることだ。しかし、それ以上追うことは出来ず、後は私の脳裏にその宙ぶらりんな狂気と幻想だけが残り、いまだに気になり続けているというわけだ。